27th memorial
60th anniversary

hide's coffeeⅣ
「DICE」

"変わらない「モノ」。
「偉大な1st」をコーヒーのルーツ・フレーバーでトリビュート。"

「モカ」というコーヒーをご存知でしょうか?歴史上、いくつかのコーヒーの発見、発祥の記載を確認できますが、とりわけ有名な伝説があります。アフリカ大陸・エチオピアのコーヒー発見伝説がそれです。時は13世紀にまで遡りますが、エチオピアで発見されたコーヒーは、長い時間をかけて全世界に散らばり、各国の気候や土壌に根付き、また、品種改良などを経て現在に至り、個性豊かな風味のバリエーションと共に私達を楽しませてくれています。それまで人類が経験したことのないコーヒーの香味は、瞬く間に世界中の人々を虜にしました。それら多くのコーヒーのルーツはエチオピアにあると言ってよいと思いますが、そのコーヒーの始祖こそが「モカ」であり、永年、日本人にも愛され続けてきました。コーヒーのルーツであるということももちろんですが、重要な事は他のコーヒー生産国とは異なり、現在でも当時に近い風味を保持している事です。食品はヒトが美味しく食しやすいように様々に改良されるのが常ですが、ナチュラル・モカと呼ぶように、ほとんどそれらしい加工を行わず現在にその風味をとどめる貴重なコーヒーであり、希有な食品であると思います。更に、他国のコーヒーには真似のできない、特有の「モカ・フレーバー」と呼ばれる風味を持ち合わせているため、発見から現在まで不動の地位を保ち続けている「THE COFFEE」であり、偉大な「THE 1st」なのです。

1992年4月、私は両親の後を継ぎ、田舎の小さなコーヒー屋の代表を務めることになりました。法人成り、つまり株式会社にして私にバトンを託したわけですが、スタッフは家族とパートさん、そして私を含め5人。父は早々に引退してしまいましたので、引き受けたからには当たり前とはいえ、主要業務のほとんど全てを自分でやらなくてはならず、常にアップ、アップの酸欠状態でした。加えて、それまでの学生感覚と社会人としての環境差、つまり、習慣、風習、付き合いなどに納得がいかない、飲み込めない部分も多く、かみ砕くのに必死でもありました。唯一の楽しみは音楽CDを漁ることでした。もう、バンドブームも終焉だったでしょうか。私は1994年、一枚のアルバムを手にします。それが「HIDE YOUR FACE」でした。当時は色々なバンドのメンバーがソロアルバムを出してはいましたが、なかなか気に入った「音」には巡り会うことはなく「HIDE YOUR FACE」を手にした時も、「ビジュアルはカッコいいし、ケースも凝ってはいるけれど、問題は音よ、オト!」なんて軽口を叩きながら、CDトレイに乗せた記憶があります。けれど、それは私が生涯の宝物を見つけた瞬間でもありました。「PUYCHOMMUNITY」から「DICE」へ、そして「PUYCHOMMUNITY EXIT」へと、一瞬でアルバムを聴き終えてしまい、それから即カセットテープにダビングして、通勤、配達の軽箱バンで爆音の日々が始まりました。私が発見した宝物は、社会人に馴染めない自らを奮い立たせる武器だったのかもしれません。「DICE」はもちろん、「DOURT」「POSE」「SCANER」「DAMAGE」と、どこにもぶつけられない感情をhideさんと一緒に歌う、そんな方たちはきっと多いはずです。1stアルバム「HIDE YOUR FACE」は、ナチュラル・モカと同様、全ての始まりであり、他に変わるモノがない「偉大な1st」の凄みを感じさせます。とりわけ「DICE」の疾走感は、複雑なビターテイストに潜む、内包された独自のスパイシーテイストがシンクロし、ディープローストされたナチュラル・モカ以外に思いつくことが出来ません。あれから30年以上が経過し、コーヒー業界も大きく様変わりしましたが、その流れを安易に受け入れることは出来ず、変わらず「DICE」は響き続けています。偉大な1stはこれからも、宝物として、武器として、ときに警鐘として輝き続けると思います。思い通りの花を咲かせるために。

株式会社 昴珈琲店
コーヒー鑑定士 細野修平


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