初開催から20年以上が経過した「Week of hide」。始まりは、田舎の小さなコーヒー屋に届いたあまりにも大きなリクエストが発端でした。しかし、hideさんのオフィス・スタッフの多大なご協力と、いつも暖かいファンの方々のご支持を受け開催してこれました。そして何より「日本のコーヒーは美味しい!!」というhideさんが遺した言葉の重み。言い換えれば「Week of hide」とは、昴珈琲店が改めて「日本のコーヒー」に向き合った20年でもあり、それは1959年の創業からこれまで、日本人のためのコーヒーを創り続けてきた昴珈琲店の本質と重なりました。さて、40年以上も過去に遡れば、我が国の他に「コーヒーを冷やして飲む」というレシピ、行為はほとんど見つかりません。私がコーヒー生産国へ初渡航した1990年代初頭でさえ、他国ではコーヒーはホットで楽しむものであり、冷やされてはいるものの、添加物などで極端にアレンジされたコーヒー飲料?をわずかに確認したにとどまります。いわゆるアイスコーヒーレシピが新しく世界中で認知されたのはここ十数年以内のことだと思います。しかし、四季を持つ我が国の先人たちは、真夏でもコーヒーを美味しく楽しもうと、昭和の時代、既にアイスコーヒーを発明しており、それは「冷珈(レイコー)」とも呼ばれ、今日まで愛され続けています。当時、アイスコーヒーが日本固有のコーヒーレシピであることに着目していた私が、コーヒー生産国に赴く度、新しいコーヒーのサンプルを入手する度、ホットコーヒー使用を前提としながらも、必ずアイス・チューンを施した場合をシュミレートするのは当然の行為でした。これを背景として、hideさんの13回忌法要の折、楽曲「Pink Spider」のトリビュートのリクエストをいただきました。楽曲「Pink Spider」が持つ、重厚感、シャープ極まりないエッジ、深淵に見え隠れするかすかな光を、コーヒーの持つ風味に乗せhide’s coffeeⅡ「Pink Spider」はホットコーヒーとして完成しました。が、同時にhide’s coffeeⅡ「Pink Spider」は、アイスコーヒーに必要な要素をも全て内包していることが私の意識から離れることがありませんでした。「Week of hide」を開催させていただく度、私は「もしかしたら「Pink Spider」をアイスコーヒーで楽しんでいらっしゃるファンの方がいるかもしれない」と思っていましたし、可能であれば、アイスコーヒーとして、しかも「液体」としてhideさんのファンの皆様にご紹介したいと思っておりましたが、この春、それが叶いました。創造にあたり、広大な国土のコロンビア共和国、13000を超える島を持つインドネシア共和国に渡航を重ね、検分した経験から、原料を入念に選定し、焙煎深度、配合割合などを、改めてアイスコーヒー専用にリセッティングし、抽出を担当してくださる工場にも、特別なリクエスト、「SUBARU SPEC」でお願いし完成いたしました。
しっかり冷やしてご賞味ください。「Week of hide」が終了する頃、瀬戸内の港町にある昴珈琲店の周辺の山々は新緑に包まれ、汗ばむ陽気が続きます。彼の愛した「日本のコーヒー」をカップに、グラスに注ぎながら、ホッと一息、更なるファンの皆様の活力となれば幸甚です。同時に、60歳を迎えたhideさんがいつまでも愛してくれるような「日本のコーヒー」を創り続けたいと思うばかりです。